『パリのアパルトマンから』アトランさやか著
3月になると引っ越す予定がなくても新しい暮らしの妄想をしてしまうことってありませんか。
ふと電車で降りた街の不動産屋さんの張り紙を眺めてみたり、ついつい一番行きやすそうなダイソーの位置を確認してみたり。気分はコリコの街を遠目に見つけたのキキ(魔女の宅急便)。
数回の引っ越しを経て、今はかなり居心地が良く自分が暮らしたい、と思った街に住んでいるのですが、人間の「もっと」の気持ちには果てがないようで、新しい街に降り立つときはそこが日本であろうが海外であろうが、今住んでいる街よりもここの方が自分が好きになれるのではないだろうか、という目線で観察してしまいます。
そんな、暮らしたい街を見つけるヒントに気がつかされた一冊が、アトランさやかさん著の「パリのアパルトマンから」
綴られているのはパリでの暮らしに関すること。タイトルの通り、パリの一室のアパートの台所でのエピソードから始まり、ラストもパリのアパートからちょっとご近所に出かけるエピソード、と、終始アパートの半径15km圏内くらいに収まっています。
(本当は15km以上ある場所へのお出かけもあるのかもしれないけど)
そんなパリの暮らしを紐解いて見えた、暮らしい街を見つけるヒントは以下の通りです。
- 暮らしたい街を見つけるヒント1「行きつけになりうるお店」
- 暮らしたい街を見つけるヒント2「その街の哲学を知ること」
- 暮らしたい街を見つけるヒント3「その街の人が出かける先を知ること」
- 最後に:暮らしたい街と住みたい街は微妙に違う。
暮らしたい街を見つけるヒント1「行きつけになりうるお店」
エッセイに登場するパン屋さん、お肉屋さん、マルシェ。THE丁寧な暮らしにあったら嬉しいものたちですね。
もちろん自分も、焼きたてのバゲットが買える地元に根付いたパン屋さんとか、まとめ買いで割引をしてくれる八百屋さんなんかが身近にあったら嬉しいですが、それ以上に欲しいなあ、と思っているのが、
・ちょっと立ち寄ってちょっと呑める、美味しいモツ煮を出してくれそうな居酒屋
・駅と自宅の間にあって欲しい中規模の本屋さん
・おいしい朝ご飯を出してくれるお店(=朝8時頃からやっているお店)
というラインナップ。
ちょっと滞在する街(Airbnbとかで暮らすように)なら、マルシェがあるといいなーとか思うのですが、暮らすとなると、自分が生活で一番大切にしたい習慣が叶うお店こそ最も魅力的に感じます。
暮らしたい街を見つけるヒント2「その街の哲学を知ること」
哲学と言うと仰々しいけれど、要するにその街に根付いている人生観や世界観を知ること。
有名な大学がある街では本屋さんが充実していて、カフェでも勉強している人が多く見られたり、畑が広がる街(というか集落?)ではみんなそれぞれお互いの畑を観察し合い、何を育てているのか、というのが主要な話題となったり、と街にはそれぞれ、何かしら価値観や世界観が染み付いています。
日本でも都会にいると忙しく、よく言えばスピーディーに様々なことを学ぶ機会が散らばっていて、地方にいるとゆったりと、じっくり自分が集中したい物事に取り組む環境が整っているなど。
都会と地方、なんてざっくり書いてみたけれど、同じ都会でも東京・大阪がそれぞれ違うように、福岡と仙台も全然違う街です。
それぞれもっている世界観が全然違うんですよね。
そしてそう言った世界観を知るヒントになるのが、
・その街を歩く女性の様子(服装・髪型・お化粧の仕方など)
・その街のカフェの様子(お客さんの層・提供しているものなど)
・その街の定番、自慢、推しを知ること
なんだと気がつきました。
女性の様子をみると、スッピンで軽やかに歩き回る街なのか、かっちり美しく街を一緒に彩るのかが分かります。
カフェに行くと、その街に住んでいる人がミクロに、よく見えてきます。
そしてその街が推しているものを知ると、その街が目指している世界観の方向性を知ることができます。
その街の哲学を知ると、今現在の世界観はもちろん、今後の世界観は自分が生きたい価値観と合っている?と考える大きなヒントになってくれます。
暮らしたい街を見つけるヒント3「その街の人が出かける先を知ること」
エッセイの中で、電車やバスで出かけたときの話が綴られているのを読み、暮らすということは週に1度くらいはその街を出る、お出かけをすることがあるということだ、ということに気がつきました。
ということは、暮らしたい街を考える時、同時にそこから出かけたい街はあるのか、ということも考えるべきなのかもしれません。
これは盲点でした!
東京だったら、どの路線沿いに住むのかによって、千葉が近かったり埼玉が近かったり神奈川が近かったりして、ちょっと遠出のお出かけスポットもそれに左右されることってありますよね。
その街から行きやすい、その街に住む人が出かけたいと思う街は、きっと自分も行きたくなるだろうし、できればその「遠出専門の街」がいつも行きたいなあ、出かけたいなあと思う街であればより暮らしは楽しくなります。
暮らす街を考えるときは、暮らす街から一時的に出るときのことも考えたいものです。
最後に:暮らしたい街と住みたい街は微妙に違う。
住みたい街、というと私の中では位置的な意味合いが大きいので、地理的な要素からアプローチします。新宿も東京も行きやすい場所はどこかなあ、と言った具合に。
けれども、暮らしたい街はちょっと違います。
地理的要素は一旦置いておいて、「生活すること」 からアプローチをするのが、暮らしたい街かな、と思っています。
私には理想の暮らしたい街の像はありますが、それが私の住みたい街に一致するかどうかはまた別問題。
そしてその逆もまた然りです。
そのバランスをとって、私はこれからも住みたい、かつ暮らしたい街を探求して行くのだと思います。
おやすみなさい。