現役の経営コンサルト公認会計士さんによるマネー小説『貯金兄弟』
こちらのブログで紹介されていたのが気になって読んでみました。
話の大筋としては、兄はバンバン稼ぐけどバンバン浪費家。弟は堅実な仕事に人によっては引く程の節約家。という兄弟の人生の歩みについて。
あまり解説が強くなく、小説として最後まで突っ走った文章だったので結構手軽に読み切ることができました。
それほど難しくないストーリーだからこそ、議論の余地・余白が結構多くて、読み終わった後に同じ本を読んだ人同士で話をするのが楽しい本だろうな、とも思いました。
(実際夫とも色々話して面白かったです)
以下、若干結末にも触れますのでご注意を。
ストーリーがそこまで難しくない(=お金の話だけどとっつきやすい)のと、結末がものすごーく、読者に色々投げている(=読者側が考えるいい材料になっている)ので、
(1)お金を何の為に貯めているのか分からない人
(2)自分にとってお金って何?という問いに明確な自分なりの解を持っていない人
(3)クリティカルシンキングを学びたい人
という人に特にオススメかなあ、と思いました。
こんな人にオススメ
(1)お金を何の為に貯めているのか分からない人
ざっくり結末を言うと、「さて、あなたはどんな生き方したいですか?」ということを投げられて終わる感じでした。
住宅ローンや生命保険と言った、大人になると誰しも一度は考えるお金の悩みについて、浪費する側、貯蓄する側両方の「もっともらしい」意見をぶつけられるので、「自分はどういう選択をしたいと思う人間なのだろう?」ということを、要所要所で考えさせられます。
お金を何に使いたいか、というのは浪費家に対してだけの問いではなく、節約家たちへの問いでもあるなあ、とも思いました。
何かがしたくて、何かが欲しくて貯めているのか。はたまた貯めるという行為自体に快感を覚えているのか。
自己分析を楽しむことが出来ます。
(2)自分にとってお金って何?という問いに明確な自分なりの解を持っていない人
お金って自分にとってどんな存在?
という問いに明確に返せない人、お金の話題に感情的になってしまう人にもおすすめです。生み出した価値を分かりやすい形にした人間社会で生きて行く上で、お金のことってそれなりに考えなきゃ行けないことだと思うのですが、何故か日本人はことお金の話となると、感情的になる人が多い気がします。
感情的になるということは、冷静に「お金」と自分の関係を客観視できていないから、というのが理由の1つとしてあるんじゃないかなあ、と思います。
とにかく兄弟のお金に関する行動が極端すぎて分かりやすいので、自分なりのお金に対する感情やポジションの「解」のヒントをキャッチしやすいだろうな、と思いました。
(3)クリティカルシンキングを学びたい人
ちょっとお金とは離れますが、浪費する側の意見も、貯蓄する側の意見も(本書の中ではお金に関してとても多くの知見を持っている知者として描かれている)、それらしく書かれていても、冷静になってみると「本当にそうなの?」と問いたくなるような情報が結構出てきます。
例えば生命保険。本書では入ることが前提として書かれていますが、そもそも入ることが前提で良いのでしょうか?
また、本書では公務員が安定職として描かれていますが、本当に公務員って安定職でしょうか?
みんなの当たり前がさりげなく前提としてちりばめられているので、そもそもの前提を疑うトレーニングにもいいのではないかな、と思いました。
人生の充実度を計るモノサシが違うということ
兄弟の生き方はかなり極端で、言うまでもなく正反対です。私達も普段の生活の中で様々な人と出会い、
「あいつのお金の使い方は理解できないな」
とか
「あの子はあんなに引き蘢ってて人生楽しいのかな」
とか人に対して思ったりしています。
けれどもそれはそうなんですよね。だって何が充実した人生か、なんて一人一人定義がそもそも違うから。
おいしいご飯を食べることに猛烈な幸せを感じる人もいれば、ひたすら絵を描いたり創作したりしていることが至福の人だっています。
充実の定義が違えば時間の使い方は変わりますし、同時にお金の使い方だって違ってくる。
大事なのは、自分が何に対して幸せを感じているのかを理解していて、自分が納得する形で自分で選んだ消費ができているかどうか、なのかなと思います。
(周囲に流された選択をするのではなく、自分自身で考えて、選んで、決めているか)
くろやんのお金の使い方と本を読んで学んだこと
私がお金の使い方の主義として大事にしていることは主に3つあります。
・自分自身が幸せだと思うかどうか
・友達を大切にする
・使うべきときにちゃんと使う
自分自身の幸せの為に使っているかどうか
これは殆どの人がそうだと思いますが、何かを買うときは結構シビアに物と対話するようにしています。
友達を大切にする
大事な友達のお祝いでケチケチしない、とか。何かお世話になったら小さなプレゼントを贈るとか、そういう繫がり的な方向についてで。
物で繋がる友達なんて友達じゃない! と言われてしまったらなんとも返す言葉もないのですが、本当にめでたい時とか、ここぞという時(誕生日が近くて友達に会う予定がたまたまある時)に、相手が気後れしない程度に、喜んでくれることを想像して何かプレゼントだったり企画を立てるのは、自分も楽しいし、それこそ誰も傷つかない。
また、友達を大切にする、には交際費として、旅行ついでにちょっと遠方にいる友達に会いに行く、みたいなのも入ります。
これは究極的に物質的なお金よりも信頼関係だったり、友達だったりの方が大切で重要だと考える価値観が私にあるからなんですよね。
こんな話をしていると、たまに「友達なんて金で買える」と言って来る人がいるのですが、正直、友達を金で買えると思っている人は本当の友達がいない人なのだな、と思ってしまいます。
(本当の友達は自分がどん底に落ちたときに助けてくれる人だと思ってます)
使うべきときに使う
人間全員が老人になるまで元気に生きている訳ではない、という命のはかなさに触れる機会が幼い頃から少なからずあったことが影響しているからかもしれません。
人間いつか死ぬ
それは明日かもしれないし、50年後かもしれない。
それは誰にも分からないんですよね。
夫も割と、「人間いつか死ぬ」という考えが強くあるので、夫婦そろって「今」へのフォーカスが強いのはそれもあるのかな。
(それなりに未来に対する準備もしているけど、結構最低限かも)
自分自身がこう生きたい、だからお金をこう使いたい、という意思を持つこと
本を読んで改めて思ったのは、
「なんとなくお金を使うことは、なんとなく人生を生きることと同じだ」
ということ。
お金って自分自身が働いて得た価値が分かりやすく数字になったようなものなので、在る意味自分自身の分身みたいなものといえばそうとも言えます。
お金をなんとなく使うということは、自分自身をなんとなく使っているのと同じ。
もちろんなんとなく、自然に生きるのも楽しいですが、それはやっぱり、誰かに選ばされて自然に生きるのではなく、自分自身が選んだ上でのんびり生きていく、という選択をしたいな、と思いました。
改めて、自分で考え、自分で決めることの大切さを思い出した一冊となりました。
というわけで貯金兄弟。
年初にお金のことを考えてみたい、という方は是非。