「想像力」
あなたがこの言葉を最後に聞いたのはいつになるだろうか。
昨日?一昨日?先月?それとももう10年以上前?
「ショーシャンクの空に」という映画を久しぶりに観た。
もし観た事がない人がいたら、ぜひ、一度は観て欲しい。「ホームアローン」がコメディ映画で観るべき映画の一つ、に入るとしたら、「ショーシャンクの空に」は感動系映画で観るべき映画の一つに入ると思う。
物語は主人公が無実の罪で刑務所に入れられる所から始まる。
いわゆる刑務所もの、なのだけれども、終わり方は何とも明るく爽やか。
主人公は刑務所で服役する中で図書係に任命され、劣悪な環境の刑務所内に図書室を整備して、新しい本をたくさん入れたり、室内をきれいにして勉強の環境を整え、服役囚人達で高卒の資格を取りたい人達の勉強を支援したりする。
一見、主人公が刑務官に対して賢く立ち回るシーンに目がいきがちなのだけれども、囚人達の刑務所を出た後の問題、ということにも向き合っている。
一度犯罪を犯した人は、再度犯罪を犯すことが多い。
これは日本でもきっと言えることだろうし、刑務所でなくて身近なところでも起きている問題ではないだろうか。
なぜ、犯罪を犯すのか。
それは、もう一度刑務所に戻りたい、と願ってしまうからだ。
人間、一度全て許可をもらって生活することに慣れてしまうと、自由すぎる中で行きて行く事はとてもハードルが高い。
これは日本の義務教育後の、高校を卒業した後の大学生だったり、社会人にだったりに当てはまる。
自由すぎるが故につらい。
大学に入学した当初、そう漏らす同級生が何人かいた事を私はよく覚えている。
人は一度何かに縛られて、それにのっとって生きると、それに慣れてしまう。親に全てのレールを敷かれている人もそうだ。
自由に生きるという事は、ほいと与えられたらすぐにできそうだけれど、実は意外と心のハードルが高くて、難しい事なのだ。
囚人じゃなくてもそうなのだから、囚人であればなおさら。
きつい縛りの中で、生きてきた囚人達にとって、外の自由は自殺したくなるくらい心苦しい気持ちになるものなのだ。
それは真っ暗闇を見ていた中で突然、光が見える事に似ている。私達も、暗闇に目が慣れているところに光が差し込むと、それが例え少しであってもまぶしいと感じる。まさにその感覚だ。
主人公がその外の世界の自由に対して順応できるように囚人達に与えたのは、想像力という名前の希望だった。
例えば、あの海の向こうにはこんな素敵なものが眠っているんだよ、という話しを聞いて育てば、いつか海の向こうに行きたくなったり、海の向こうに行ってきた人の話しを聞きたくなったりする。
あの木下に宝物が眠っていると言われれば掘って何が眠っているのか確かめたくなったり、そういうものが想像力であり、生きる希望になっていたりする。
そんなわけで主人公が図書室に入れた本として映画中に出てきた冒険物は「宝島」だった。これも名作。
全員が海に行きたくなる訳ではなくても、あの本の主人公のようなワクワクした気持ちになりたい、と考えることができるようになる。
それこそが希望だ。
もしも「想像力」という言葉を聞いたのが久しぶりだった人は、何か児童書を読んでみるのもいいかもしれない。
大人向けの物よりライトですぐに読めるから。
自分の想像力が低下している事に気がついたら、少しずつ、リハビリしていけばいい。
そう、未来の自分にも伝えたい。