くろやんの日記

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【読書感想文】"隙き間だらけの戦争知識"を痛感させられた『妻と飛んだ特攻兵』

 

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8月に入ると、自然とテレビや公共機関で"語り部の会"の集会情報のチラシなんかをみかけて、"戦争"について改めて考えさせられたり、様々な立場の人に対して思いを馳せたり。

なんとなくAmazonプライムを見ていても、戦争モノは目に付くし、図書館に行くと特設コーナーが作られていたりします。

 

ネットのおかげで社会の教科書に載っていた"戦争"がほんの一部であることを学んで、高校生になって世界史を学んでからは、他国から見たときの"戦争"の姿について考えて。

タイトル通り、隙き間だらけの戦争知識をなんとか埋めようとして、色々な立場からの戦争を学んできたつもりでしたが、最近出会って本日読み終わったこの本に、改めて「まだまだ戦争知識は隙き間だらけ」を突きつけられました。

 

タイトルは『妻と飛んだ特攻兵』著者の豊田正義さんは元はニューヨークの日経記者からノンフィクション作家になった方です。

 

そもそも、タイトルを見て、え? と思いました。

というのも、特攻機はもちろん基本的に軍用機に女性が乗ることは、超絶タブーだったからです。

妻と飛んだって、乗ったの? 特攻機に? え? というワケで、かなりタイトルに興味をそそられてこの本を手に取りました。

 

読んでみると、話は8月15日の玉音放送後の満州での出来事を中心としたお話でした。

そこに至るまでの特攻兵の詳細やその周辺まで細かに描写されていて、とても分かりやすく、かつ読みやすかったです。

一見若き特攻兵とその新妻の美しいストーリーにも見えてしまうくらい、エンターテイメント性もある作品になっていたのですが、著者が細かにまとめあげている当時の情勢、満州国が成立した政治的背景の詳細がとても分かりやすく、そして自分としては、そんなことがあったんだ、そんな政治的動きがあったんだ、と目から鱗の知識がたくさんでした。

もちろん解釈の仕方など、戦争文学は慎重に自分の中に咀嚼して行く必要のある情報史料だと思いますが、『坂の上の雲』で満州攻略の部分が地名が中々覚えられず、読み進められていなかった私にとって、満州国がどのように立ち上げられていったのかが分かりやすいストーリーで描写されているところなどから、他の戦争モノを理解する為に読むのにとてもちょうどいい本だなあ、と思いました。

 

読みやすくてするする読めたのですがタイトルに書いた通り、"隙き間だらけの戦争知識"を痛感させられました。理由は3つ

・そもそも社会の教科書レベルの戦争認識でいると、8月15日以降の日本の姿がどのようであったか、というところまで何も想像できないくらい知識がなかった。

ソ連との関係、満州他他国に残った日本人がどのように生き抜いたか、等)

・某漫画、映画などを見ているとそこそこの数の国民が戦争に不満を持ち(不満を持っていた人が主人公ポジションであることが多いので)、戦争バンザイをしていた人達の描写が少ないので、戦争バンザイ組だった人達の存在が薄まりがちだった。今作は普通に戦争バンザイ、天皇バンザイと言っていた人達のお話

満州という国ができるまでに政治がどのように動いたのか、特に外交官に焦点を当てているのが自分に取っては新鮮な視点だった(つまり今まで、戦争突入において主役級に大事な外交の動きなどを学んだことがなかった)

 

 

そもそも満州という国についての知識が本当に薄っぺらかったんだなあと痛感しました。それこそ今、『坂の上の雲』も読んでいるのですが地理を把握しながら読んでいるので遅読を極めていました。それは多分、満州に関する予備知識が本当に0だったせいもあるかと思います。

社会の教科書には、リットン調査団が載ってたことくらいしか思い出せない。 

今回ライトな本で学んだので、最近サボりがちだった『坂の上の雲』もちゃんとまた読み出したいなあと思います。 

 

戦争文学はライトに戦争とは何だったのか、を学び始める第一歩にちょうどいいと思いますので、何冊か手に取ってみても良いのかなあと思います。8月という期に是非。