くろやんの日記

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破綻さえもエンターテイメントに。映画『ドラえもん のび太と夢幻三剣士』の感想

現在Amazonプライムドラえもんの映画が見放題となっています。昔懐かしい作品が並んでいて、ガラガラ声のドラえもんに会いたくなって一つ見てみることにしました。

 

選んだのは『映画 ドラえもん のび太と夢幻三剣士』

子どもの頃から、理由は分からないのですがなぜかこれが好きで、繰り返して見ているはずなのにいつもラストが全く思い出せない作品。

場面ごとのエピソードは印象に残って忘れられないのに、何度見直してもめちゃめちゃ面白かった、という終わりだったのかさえ思い出せないのに、時間が経つと観直してしまう、そんな作品です。

 

 

【ここからネタバレ注意】

 

見終わった感想としては、「よくトラウマにならなかったな」と思うくらい、結構怖いストーリー展開でした。

いや、大人になったからこそ、この怖さを理解できるようになった、というのが本当のところでしょうか。とにかく、ラストが怖かった。

 

ストーリーの概略はこんな感じです。(wikiより)

ドラえもん のび太と夢幻三剣士 - Wikipedia

夢の中で良い思いをしたのび太は夢と現実の落差を嘆き、せめて夢の中で良い格好をしたいとドラえもんに懇願する。一度は「もっと現実の世界で頑張らないと駄目だよ!」と怒られるも、最終的にはカセットを入れることで自分の好きな夢を見られるひみつ道具「気ままに夢見る機」を出してもらう。その翌日、宿題をやり忘れたのび太が裏山で宿題をしていると、奇妙な老人が現れ「知恵の木の実」をのび太に与え、帰り道では「あなたはもっとすごい力が手に入る。ただし、『夢幻三剣士』の世界でのことだが」と言い残し去っていく。
「夢幻三剣士」とは気ままに夢見る機の夢カセットのことであった。のび太ドラえもんに「夢幻三剣士」のカセットを買ってもらい、「妖霊大帝オドローム」に侵略されかけているユミルメ国を救う伝説の剣士ノビタニヤンとして冒険する。
しかし、ドラえもんも気づいていなかった。この冒険、この夢世界が単なる一時の夢ではないことに。

 

 

 

こんな話なのですが、単純に夢の国に飛び立った、ジャイアンスネ夫、しずかちゃんと協力して魔王を倒し、そして現実の世界に戻ってくる、みたいな終わり方でもないんです。

トラウマにもなりそうなストーリー展開のキーポイントがいくつかありました。

ドラえもん映画の中で、ほぼほぼ唯一、明確に主人公チーム(というか主人公の)のび太、しずかちゃんが一度死ぬ(竜の力で一度だけ生き返れる設定で戻ってくるけれど)

→結構はっきり、ちゃんと死ぬ。これだけでも子どもだったらちょっと怖いかも。

・最初の知恵の実の伏線が回収されないまま

→ブリキの迷宮の時のように、向こうの世界とあっちの世界、という明確な線引きがないせいか、この知恵の実が渡されている場面でさえ夢?と感じさせられる。結局最後までこの怪しい人物の伏線はあまりきちんと回収されません。

のび太たちの手助けとなる向こうの世界のキーキャラ(ゲスト)がいない。

→案内人はドラえもんが夢見る機のキャスト設定でセッティングしたしずかちゃんがやってくれています。(でもしずかちゃんは夢幻三剣士としても活躍しているので、あれ?しずかちゃんはどっちを自分として夢見ているの?とも)

・ラストの大団円でジャイアンスネ夫がいない

→いつも最後までみんなで冒険するのに、ジャイアンスネ夫は途中棄権してしまいます。

・最後に夢から覚めて、学校にしずかちゃんと向かうシーンで終わるけれど、その最後に出てくる学校の絵が、夢の世界と融合したような絵になっている。(しかも夢の途中で夢見る機は未来の業者によって回収済みのはずなのに)

→この絵、めっちゃ怖いです(笑)子どもの頃、どんな気持ちで観てたんだか、思い出せない。もしかしたら、理解できていなかったのかもしれない。

物語はここで終わり。追記も何もありません。ハッピーエンドに見せかけて、ぜんぜんハッピーでもない感じが尾を引いて、ある意味忘れられない作品となっているのかもしれない。子どもの頃はこれが途中だと思って、いつもラストまで観ていない、という気分だったから、ラストってどうなるんだっけ?って思っていたのかも。

 

うわあ、違和感、と思いながら観終わった後ググってみたところ、藤子F不二雄自身が『長編の組み立てにした失敗作』と言っているようです。

しかしながら、夢だからこそ破綻していても、「そういうもんか」という姿勢で観ることができるが故に、最後まで観ることができる映画になっているのかもしれないです。もちろん子ども向けのストーリーとしては絶妙な破綻状態で終わることになり、そこが夢っぽくもあり、言い表せない怖さと、なぜか何度も観てしまう魔法を私達にかけているんじゃないかと感じました。

 

「よくわからなかった」と一言で片付けられそうな映画かもしれないけれど、破綻しているが故に惹き付けられる部分もあり、

藤子F不二雄先生は、「失敗した」って言っているけれど、破綻しても尚、エンターテイメントとして人を惹き付けている辺りは、やっぱり藤子F不二雄先生天才か、とも思ったりします。

いや、普通にこれはこれで面白いよ、先生。