映画をよく見るようになってから、自分の中で映画のジャンルが増えた。
別に世の中で映画のジャンルが増えている、みたいなことではなくて、自分の中で増えたのだ。
これまで私の中で映画のジャンルは、邦画か洋画かアニメか。くらいのジャンル分けしかしていなかった。
映画好きな人が聞いたら怒りそうなジャンル分けかもしれないし、映画は話題の物だけ見に行くくらいの一般人からしたら、え、私もそんなもんだよってところかもしれない。人によっては映画は映画で、邦画も洋画もごちゃまぜにしている人もいるだろう。
しかし、映画をたくさんみるようになってくると、なんとなく今日自分が観たい映画の雰囲気、というのが少しずつ説明できるようになってきて、それが洋画は洋画でも、ハリウッド系なのか、フランス映画なのか、インド映画なのか、自分で選べるようになってきた。
勧善懲悪を観たければアメリカンなやつをみるし、オシャレなやつならフランス。ラストにもやもやが残る、考えさせられたい時は邦画がよかったりする。
何かをよく知る、ということは区別がつくようになる、ということなのかもしれない。本も音楽も服も、そうだった。
たくさん読むと、自分の文章の好みや話の好みが分かってきて、自然とそういう本を選ぶようになったり。色々なジャンルを読みつぶして、あれこれ書評家を気取ってみたり。たくさん読むと、ものの良いところと悪いところがどんどんよく見えてくるから、何か評論したくなってくるのかもしれない。
音楽もそうだった。特別に興味はなかったところから、色々なものを聴き始めて、最初は単純なのが好きだった。邦楽も洋楽も。和音なんて言葉は知らなくて、ただ危機心地が良いものを選んでいた。ボカロも聴いた。ゲーム音楽も好き。
けれど、だんだん分かるようになると、刺激を求めてジャズにも行き着いた。あれは頭がおかしくなるような音楽だ。いわゆる使っている和音の数が一般的に流れている音楽より多いらしい。
強烈な刺激に慣れた後に、単調なものを聴いてもなんら刺激を感じずにもとに戻ってしまう調子で、ジャズにははまりっぱなしだ。
専門的なこともそうだ。会計とか、金融とか、政治とか、色々知るから区別がついてあれこれ言いたくなる。
区別がつかないものは大抵興味がなくて勉強をしたことがないジャンルだ。あれとあれの違いが分からん、みたいなやつ。
多分昆虫学者はアリをみて、瞬時にどんな種類か分かるのかもしれないけど、私はアリだと認識することしかきっとできない。
区別がつかないからこっちがいいに決まっている、で自分の大事なことを決めるのはとてももったいないのかもしれない。
映画のジャンルがたくさんみていくうちに分かるようになったように、何かを知ることを止めない、ということは続けていきたいと思った。