仕事終わりにそのまま新幹線に乗り込んで、旅立つ。
手には駅構内で買ったお惣菜に、金色に輝くエビスビール。
旅立つとか、何か特別な時にしかも楽しいことが待っている場所に移動しながら飲むビール、というだけでもよだれが出てきそうなのに、持っているビールが金色なだけでより一層、心が躍る。
これを我が家では金の魔法と読んでいる。
もちろんエビスビールは好きだ。おいしい。でもエビスこそが一番というふうに思っている訳ではない。つまみによってはキリンの一番搾りが良いときもあるし、プレモルにしておきたいときもある。場合によってはドイツビールでも。オシャレなつまみなら水曜日のネコなんかもいい。
けれども、今回のこの新幹線に乗るときに食べるおつまみが何であっても、私はエビスを買ったと思う。なぜなら金色だったから。おつまみに合うのがドイツビールだろうとか、プレモルだろう、とか思ったとしても、新幹線に乗って旅立つ前に飲みたいビールは金色のエビスだった。
金色はなんだか特別だ。一等賞の色だし、商店街でのくじ引きも「一等」というネームじゃなければ金賞だ。オリンピックも一位は金メダルだし、銀の延べ棒と金の延べ棒なら金の延べ棒が欲しくなる。
金の魔法で旅立つ瞬間のこの幸せを、なんて形容したら良いんだろう。